10月に入り、店頭に並ぶさつまいもの種類がぐっと増えてきました。袋やポップに書かれた「産地」の欄、いつもなんとなく見過ごしていませんか。じつは日本のさつまいもは、産地ごとに得意なことや育て方の工夫がずいぶん違います。今回は、収穫量の多い4つの県をめぐりながら、それぞれの個性と、お買い物で役立つ見方をご紹介します。
まずは数字で見る、4大産地
農林水産省の統計によると、令和7年産(2025年産)のさつまいも(かんしょ)の全国の収穫量は約69万9,400トンでした。そのうち上位の4県は次のとおりです。
- 鹿児島県:約21万9,000トン(全国の約31%)
- 茨城県:約19万5,500トン(約28%)
- 千葉県:約8万トン(約11%)
- 宮崎県:約6万9,500トン(約10%)
この4県だけで全国の約8割。南九州の2県と関東の2県に、大きく分かれているのがおもしろいところです。同じ「さつまいもの産地」でも、南と東ではつくられる目的や品種、出回る時期に違いがあります。
鹿児島県:食べるだけじゃない、暮らしを支える芋
収穫量日本一の鹿児島県。ただ、スーパーで「鹿児島産」の焼き芋用の芋をたくさん見かけるかというと、そうでもないと感じる方もいるかもしれません。それもそのはずで、鹿児島のさつまいもは、芋焼酎の原料や、でん粉の原料として使われる分が大半を占めるとされています。
焼酎用の代表的な品種が「コガネセンガン」です。皮も中身も淡い黄色で、芋焼酎らしい甘い香りのもとになる品種として、長く頼りにされてきました。でん粉に加工された芋も、さまざまな食品の原料として、目立たないところで私たちの食卓に届いています。
鹿児島の芋は「焼き芋として食べる」以外の形で、知らないうちに口にしていることが多い、と覚えておくと、芋焼酎やお菓子の原材料表示を見るのが少し楽しくなります。
茨城県・千葉県:関東の畑から、食べる芋を毎日の食卓へ
関東の2県は、主に私たちが家で食べる「青果用」や加工用の芋を多くつくっています。大消費地の首都圏に近いことも強みです。
茨城県は、干し芋の生産で全国トップの県として知られています。主な産地はひたちなか市、東海村、那珂市などの県央地域。蒸した芋の皮をむいて切り、砂糖などを加えずに干すだけの素朴な作り方で、寒くなる季節に作業が本格化します。いまの時期に収穫された芋が、寒くなるころ干し芋になって出回る、という季節のリレーを思い浮かべると、冬の干し芋がいっそう待ち遠しくなります。
千葉県は、成田市、香取市、多古町などが主な産地です。千葉県の広報では、主力の「べにはるか」を収穫後に1カ月以上寝かせ、甘みを引き出してから出荷していることが紹介されています。掘りたてよりも、少し寝かせた芋のほうが甘くなりやすいのは、べにはるかならではの楽しみ方ですね。
宮崎県:いちばん早く夏の新芋を届ける産地
宮崎県の串間市周辺では、「高系14号」から選ばれた系統の「宮崎紅」が育てられています。鮮やかな紅色の皮と、淡い黄色の中身、加熱するとほくほくした食感と上品な甘さが特徴です。
この地域は暖かい気候を活かして、トンネル栽培による「超早掘り」で6〜7月から芋を出荷しています。その後、早掘りが7〜8月、普通栽培の芋が9〜11月と続きます。まだ暑い夏の店頭で見かける新芋は、こうした南の産地から届いていることが多いのです。
お買い物で役立つ「産地の見方」3つ
最後に、今日から使える小さなコツをまとめます。
- 時期と産地をセットで見る 夏から初秋は宮崎などの早掘りの新芋、秋が深まると関東の芋が増えてきます。「いまどこの芋が多いかな」と意識すると、季節の移り変わりが店頭から見えてきます。
- 同じ品種を、産地違いで食べ比べる たとえば「べにはるか」を、茨城産と千葉産で1本ずつ買って、同じ焼き方で比べてみましょう。焼き時間や温度をそろえるのがポイントです。土や寝かせ方の違いで、甘さや食感に意外な差が出ることがあります。メモを残しておくと、自分好みの組み合わせが見つかります。
- ほくほく派は「宮崎紅」などの高系14号系、ねっとり派は「べにはるか」から 食感の好みがはっきりしている方は、産地と品種の両方を手がかりにすると、選ぶ失敗が減ります。
産地を知ると、いつものさつまいもが「どこから来た、どんな芋なのか」という物語を持ちはじめます。この秋の芋活は、ぜひ袋の産地表示にも目を向けてみてくださいね。
農家のひとこと
有名な品種のなると金時や安納芋や五郎島金時など産地の名前のついた品種もある一方で、大分の【甘太くん】や、かいつかさんの【紅天使】など今ある品種(この場合は紅はるか)をブランド化してる名前もあります。産地と時期と名前など意識してみると楽しいと思いますので、お芋選びを楽しんでみてください。



